2009-03-06

道具 大切な物

 段々と自分にとってどんな機材が大切なのかが分かってきた。 

 仕事の為に私が所有できているべき道具はノートとペンとデジカメだ。 どれも他の物と代替え出来ない上に、他の物の代わりの仕事は十分にしてくれる。 これだけ優れた道具は無いと思う。 勿論コンピューターや素材、机、文房具、そういった道具も必要だけど、それらは基本的に誰の物でも使えれば問題が無い。 共有できればそれで良い気がする。 人によって違うと思うけど、肌身離さず持ってないと支障をきたす機材は私にとって上の三つなのね。

 これらは最低限(だけど最高)な道具なので、身近に持っていないと非常につまらない。 「なんだよ持って無いじゃん! つまんないじゃん!」ってなる。 持っていると本当に楽しい。 毎日もっともっと楽しくなっていく関係だ。 私にとっての最低限だけど、最高の財産。

 私が重要だと思っている理由は、1.簡単に持ち運べる、2.応用が利く、3.インプットとアウトプット両方に使える、からだと思う。

 私の生涯基本的に使い続けていく道具はこの3つなんだと気がついた時に、自分自身のやりたがっている事がちょっと分かった気がした。 エンツォ・マーリの「プロジェクトとパッション」の中に、自分が50歳の時の作業部屋を想像してみるという文章が載っていた。 彼の所に学生が話しをしにくる時いつもきく質問なんだそうだ。 その部屋はどこにあるのか、どんな様子なのか、何があるのかなどを学生に考えてもらうらしい。

 私も読みながら考えた。 私は大きな窓のある広い空間のど真ん中に、大きなダイニングテーブルと5つぐらいの様々に作られた時代やスタイルの違う木製の椅子が置いてある様子が目に浮かんだ。 そこが私の仕事部屋だ。 そしてそれ以外の物は何も置いていない。 毎朝人が入ってくる度にその時やっているプロジェクトに関係している素材を小さな物置部屋から取り出す。 そしてみんなの鞄の中に入っているプロジェクトに最も深く関係している物が、ノートとペンとカメラだと思った。

 どうしてこう想像したのか、どうしてそれが理想だと思っているのかを考え直してみた。

 どうして唯一浮かんだ個人が所有する機材がノートとペンとカメラなのか。 そして自分の仕事部屋というテーマなのに、椅子が5個あるのか、そして奇妙にミニマルなのか。

 一週間以上時間があればコツコツとその事について考えた。 それこそ、ノートにペンで書き込みながら。 道具に関しては上に書いたように、1.簡単に持ち運べる、2.応用が利く、3.インプットとアウトプット両方に使えるってのを非常に重用視しているからだと分かった。 この3つのポイントが私にとっての黄金律なようだ。

 空間は私が神経質なミニマリストではなく、他の人と一緒に使えるものはそれを使う事で私と社会が繋がればよろしいって程度の、意外とおおらかな発想なんだと分かった。 大学でやったプロジェクトの中で一番自分が好きだったものは、公共空間で共有される乳母車のデザインだった。 あのプロジェクトはやけに燃え上がった。 不自由になるから物は極力持ちたくない。 でも無くて不便なのも嫌だから、出来れば人と共有したい。 そういう便利を私は目指したいのだ。

 そして私はでっかな楕円形のダイニングテーブルを中心に、集まる必要があるときはオフィスの人みんなで集まって、各々のノートとその時やっているプロジェクトに関係している物を卓上に広げて色々と進め、そうじゃない時はハンティングに出かけるっていう仕事のやり方をしたいのだろう。 1人では無理だけど、5人いたら自分の求めている成果程度の仕事は出来ると思う。 もし私が50歳ならば、自分のパートナーと、三十代ぐらいのシニアデザイナー2人と、二十代のジュニアデザイナー1人のチーム構成で、仕事が回せるような人になっていたい。 

 「なるほど、そうなのね、私。」と納得。

 じゃあ、音楽は?

 絵画は?

 彫刻は?

 植物は?

 台所は?

 足りない物を数えだすときりがないし、実際本当に事務所を持つようになったら、そういう物を置くだろうと思う。 ただ基本は上に書いた空間なのだな。

 最近、道具について前よりもいっぱい考えるようになった。 使っていると楽しいってどういうことか、便利ってどういう事か、豊かな使用体験ってどんなのかとか、日々考えている。 そしてもっと知っていきたい。 案外私は工業デザインが好きなのかもしれない。

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