2009-03-01

ヒッピーと働くということ

 私の会社の役員達は皆ヒッピーだ。 綺麗な身なりをしているし、清潔で上品な格好をした人達なので一見ヒッピーにはうつらないけど、彼らの青春や考え方を参照すると激しくヒッピー。 

 まず大前提としての特徴、「猛烈にアップル コンピューターを尊敬している」っていう面でまず合格。 私の親を見ていてもそうだけど、今50代から60代の人にとって、アップルコンピューターって「俺らの世代!」なんだよね。 自分達が社会で働きはじめた頃にこのCMを見た彼らへの衝撃は、多分今の私達には想像もつかないぐらいのものだったんじゃないかなあと思う。 アップルコンピューターは今日の物ってイメージが強いけど、私達の親世代ぐらいからすると、やっぱり彼らの青春と理想を反映した会社なんだろう。

 

 私の父も70年代をアメリカの西海岸の大学で過ごした典型的なヒッピーなんだけど、今でも私の産まれた歳の話しになると、このCMのことを話す。 「良い歳に産まれた。 1984年はMacの産まれた歳だ」とうっとりとされる。 そんな彼も勿論、アップルの伝道師。 会社で役員達に産まれた歳を話した時にも同じ反応をされた。 

 産まれたときからずーっとMacがあって、週末にはMacのお店に連れ出されて美しさを永遠と語られていた私からすると、「Mac、Macうるせえよ!」となるけど、なんか気持ちは分かる。 今この鬱蒼とした気分の世の中に、私の理想を反映しきちんと社会的に成立した会社が登場したら一瞬で大ファンに私はなると思う。

 なんか肌に合う会社だと日々思うのだけど、根底にはApple的な世界観の肯定=ヒッピー文化があるんだろうな。 

 「あなたを雇った理由は、会社にとっていつでもオープンマインドで、違う意見を言う人が必要だから」と堂々と言って、それが本当に口だけじゃない所もApple的な世界観があるからだろう。 私は一つのカウンターカルチャーとして雇われているんだなとつくづく思う。 一石を投じて、硬直してしまう可能性があるミーティングとかに活発な議論を持ち出させる為に雇われている。 別に私の意見がゴールにたどり着く為の舟になることは求められていない。 変人枠で入ったんだと思います。 あぁ、もっと変な人にならなきゃ。 それが私の役割なんだ。

 後この人達ってヒッピーだよなあと思うのが、書類の直し方だ。 ボスッシングというよりも、コーチングの方に向いているのがヒッピー達の人の良さだ。 「上から物を言わない」ということに命を賭ける集団でもある。 これもやっぱり父と一緒だ。 上から物を言われたことはないけど、いっぱいのアクティビティーを私と一緒にやってくれる間に色々と学んだ。(残念ながら主にMac関係だけど) 

 「一応やってみたけど、多分この書類の書き方は間違えています。 だって、これまでこの手の書類は書いた事が無いから。 自信ないです。」って言いながら書類を提出した時に(しかも会社側が外注先に出す一番重要なデザインの発注書だった)「この手の事に正しいとか間違えているとかは無い。 ただ一番伝わりやすい形かが問題。 だからそういうことは心配しないで。」と言われて、全員で読み返した後に、分からない所を徹底的に洗い出して(このプロセスでかなりコンセンサスがとれたし、完成系が出来上がった)最後は私と社長で書類を整えた。 すっげー自分がやっている事が分かった、良い仕事の仕方だった。 

 要するに一番理解が浅い人が仕事の最初の段階をやって、その内容をプロジェクトメンバーで訂正していくプロセスをミーティングとして使い、そこで合意をとり、最後に一番その仕事が上手な人が付きっきりで一緒に文体を整えるっていう流れなんだよね。 合理的だと思う。 というか、若手にとっては非常に良い体勢な気がする。 プロジェクトメンバーの合意もとれるし、多くの人の目が通っているから内容も伝達性の高い文章になるし。 
 
 この集団での働き方もヒッピーっぽいよなあと思う。 個のレベルではカウンターカルチャーとして人を重宝し、集団になると民主的で次の世代に何かを伝える気が強い。 やっぱり楽しく働いて、でも合理的にやってとっとと終わらせて、家に帰って遊ぶっていう強い目的意識があるかなんだろう。 

 大学の教授がこの会社に私を入れた時に「多分君はここと肌があうから」と言っていたのだけど、この事だったのかと思う。 私も仕事は最小限で後は遊んでいたいタイプです。 なので一石二鳥とか大好きです。 便利な物に弱いです。 「今やっている仕事を同時にどうアーカイブ化させて次に最初からやり直すっていう時間のロスをなくすか(しかも楽しく)」とか必死に考える方です。 もっとこういうことが上手になりたい。 そういう意味での仕事上手になりたいぞ。

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