2010-03-03

うれしくって抱きあうよ

相変わらず定番の悩みにうじうじしている。 例えば、日本に帰るかとか、まだ放浪するかとか。 

 この悩みは本当に家族の価値とかを考えさせられる話。

 日本に帰ろうかなと思う理由の大きな部分は、実家がそこにあるから。 心の半分は(たまにそれ以上)「家族の近くで幸せに暮らしてなんぼだろう!」と思っている。 家族と幸せに近くにいられるって、最も贅沢で、最も心が満たされる事なんじゃないかとも思うんだ。 これまで育ててきてくれた親の老後期は、私が目一杯お世話をしたい。 何が何でも自分の親の老後を一緒に過ごしてあげたいし、その際一緒に自分の子育てもしたい。 淋しい思いはさせたくないのだ。

 連れ合いは本当に親兄妹と仲が良く、私も軽く一員として一緒に過ごさせてもらっている。 彼は「どんなことをしてでも親を養う」というアンケートで堂々たる世界一のYES率をたたき出したイギリスの若者なだけあり、やっぱり見ていると本当に家族が親密。 「階層内同士でのその頑な連結がイギリスの社会を硬直化させているのではないか…」と嫌味に思ったりもするが、しかし、いやはや、それでもいい面が沢山見える。 その家族への忠誠心に、五カ国中最下位だった日本出身の私ですらも感化された。 本当に、実際、彼の家族愛は立派なもんだ。 とても学ぶ事があった。 親は慈しまなくてはいけない。 ってことで、日本に帰ろうかなあーって方向に考えが進む。 

 親しい友人たちからよく「親と子の立場が入れ替わってきた」っていう話を聞く。 段々と今度は自分が親の面倒を見たい、careしたいっていうふうにシフトしてきたんだよな。

 しかし日本に帰ったら確かに親の近くにはいれて、何かしらの孝行が出来るんだろうとは思うんだけど、自分のライフはどうなるの??って思いがわいてしまう。 「自分ならどの国のどこにいても幸せに暮らしていける」っていう強い自信はまだ自分には無い。 また、一度日本に帰ったら二度と国外で住めなくなるんじゃないかと思うと怖い。 二度と日本以外で住めなくなるってのは、二度と日本に住めなくなるってのと同じ位、私にとっては怖い。

 30をちょっと超えた位の友人夫婦が子供を授かったんだけど、その際に「結構どこでもやっていける自信がある。 あと親になる前にやり残した事が無い。」と言っていたのが印象的だった。 別に、自信が無くても、やり残した事が沢山あっても、状況を楽しめる人は沢山いるし、願わくば自分もそうありたいと思うけど、同時にやはりある程度の自信は、ある程度の年齢までに欲しい。 それが日本に帰るってのとどう両立できるかが分からないんだよな。 シンプルに、海外で労働ビザを取るのは結構難しい。 よっぽどのエリートか専門性の高い人じゃないと自信満々に「コスモポリタンに生きる」とは言えない。 そして私はどっちでもない。 まだキャリアすらちゃんとない。 そういう生活を可能にしている友人たちの姿を見ながら、もうちょっと自分も挑戦し続けたいと思ってしまう。

 少なくとも、確実に、デザイン関係の仕事の場合、かなり近い将来自分が具体的にいる場所は仕事に関係が無くなる。 実際今ニュージーランドで働いている私のクライアントは世界中の人達だ。 今は会社を通してクライアントと繋がっているけれども、もし窓口を自分に出来た場合、本当に住環境には制約が無い。 日本に住んでも世界中の人と仕事が出来る。 逆もしかり。 その際の選択肢を今培っていきたいのだ。 (奈良美智さんは数日間のアメリカ滞在の為にビザを申請したら、十年分おりたんだそうだ。 すっごい、これは本当にすごい。 あのアメリカでだよ?! 多分一生私にはそこまでの’目に見える位ウルトラ級の社会への貢献度’を移民局にアピールできないと思うので、本当に確実さと堅実さが必要になる。)

 自分がどういう形で自由自在になるか(目指すか)ってのは親と同じ位に大切。 なぜならば、これこそが親が私にくれた財産だから。 大切にしたい。





 そんなこんなでこの間、私、26歳になりました。 母校の校長先生の名言「30歳までには幸せな人になっていろ」のカウントダウンが始まった感じ。 先生、大丈夫です。 私、すでに幸せな人です。 ただまだ大人として自由自在じゃなくて技術が無いだけで。







 クライアントの一人がくれた手紙の中に、彼女の故郷であるバルセロナへの思いが書いてあった。 彼女はイギリス人と結婚して今ロンドンにいるんだけど、「故郷を離れる事で、今自分の持っているものだけ(実質沢山!)から暮らす方法を学びました。」と書かれていた。 本当にその通りで大笑いしながら読んだ。 実質沢山! 彼女の為に、バルセロナの思い出をまとめた本を作った。

 こういう事を思うと、怖くて肝が冷えたりもするから、連れ合いとじゃれあう。 最近知った名曲「うれしくって抱きあうよ」が頭にめぐる。

2 comments:

Lefol said...

私はイギリスで、自分の持っているだけギリギリを使いながら、
何とか連れ合いと生きていく自由と充実感をようやく味わい始めたところです。

以前はロンドンで国際リクルートメントのコンサルタントをしていたので、
ビザ取得始め、母国でない国で働くことの難しさを公私ともに
実感するところもありつつ。

でも逆に、自分の母国日本で生きていく自信がありません。
でも、家族のことがあり、日本に帰って暮らす決断が必要に
なりそうで、心臓がギューッとなっています。

始めは何やら洗濯機さえ怖くて、外に出た瞬間吹いた風にもドキリ、
自分がまるで裸で歩いているように感じたり。
子供の頃から海外で暮らすのが夢だったのに、まずはそんな自分にガッカリ、ビックリ。
そうやってゼロから始めたイギリスでの生活でした。

でも、日本社会のいろんな理不尽さ、ここで感じて苦手に思うだけじゃ何も解決しませんからね。
またタイムリーな記事で。
勇気を出して、また飛び込んでいかなきゃ、と思いました。

Anna said...

本当に、自分の持っているだけ(実質沢山!)ぎりぎりを使いながら私も暮らしています。

持っていないものを数えると自分の貧しさにぞっとしちゃったりするけど、持っているものを見つめ直すとうっとりする。

Lefolさんは国際リクルートメントのコンサルをしていらしゃったのですね。 それはそれは、はっきりと移住の難しさを知ってらっしゃるでしょう。 大人になってからイギリスのビザ取るとか本当に難しそうだもんな…。

日本で暮らしていく自信は私もありません。
でも大丈夫! 多分今日本に住んでいる人達にすらないだろうから!

って事は楽しんだもの勝ちです。

もし帰国しなくては行けない理由が家族関係の事ならば、その時の国の情勢がややこしかったからとかっていう些末な理由で自分たちの家族が引き離されるいわれは無いと、強気にいくしかないですね。 日本がしっくりこなかったから家族の絆もほどけたってなったら、それこそ悲劇。

でもやっぱり今住んでいないところに移るのは怖いですよね。 特に日本はなんか大変そうだし。

日本には永久帰国じゃないんですよね?