2010-01-26

メンター爺さん 一人目

 私の教授、ピーターは私が最も尊敬しているプロダクトデザイナーの一人だ。 仕事っぷりも好きだし、人としても良いと思っている。 悪くない奴。 いつも息子のデザインした服を着ているおしゃれ爺さん。



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 彼のお父さんはグラフィックデザイナーだったんだけど、どうもそりが合わず(怖い人だったらしい)一緒に働いたりはしなかったんだそうだ。 だから彼自身が父親になった時に「子供たちに俺と働いても構わないって思ってもらえるような父親になろう」と決めたんだそうだ。

 結果息子は三人とも、すごく優秀なデザイナーになった。 そのうちの二人はプロダクトデザイナーになり、ピーターを自分たちのプロジェクトに誘ってくれた。

 彼らは一緒にLomakという身体障がい者用のキーボード/マウスをデザインした。 

 これはかなりのドリームプロジェクトだ。 大抵のプロダクトデザイナーの最終的な夢は、デザインの恩恵をえれていない/しかし実際は最も求めている人に、的確な形で物を提供する事だと思う。 しかし現実的にはユニバーサルデザイン(誰もが使えるデザイン)の実行は難しい。

 私はいつか一回は絶対に医療関係のデザインをやりたいので、この話がうらやましくてしょうがないんだ。 それは彼も同じでいつかは人が必要としている物を作りたいと思っていて、そして息子たちがチャンスをくれたのだ。 だから誘われた時はいろんな意味でとても嬉しかったそうだ。





 そしてやっぱ単純に良いプロダクトだから、数々の賞を受賞し、NYのMoMA(ニューヨーク近代美術館)で永久保存される事になった。 その時に先生がにこにこしながら「いつかはMoMAにって思ってたから嬉しい。 妻がすごい喜んだのも嬉しい。」と言っていた。 夫と息子が一気に殿堂入りしたんだから、奥さんにとってもすごいプレゼントだよね。

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 最近ピーターのお父さんが亡くなり、彼はお葬式に来てくれた人や、これなかった友達の為に、小さな三冊の本のセットをデザインした。 一冊は彼のお父さんの伝記がユーモラスに書かれた本。 次はお葬式で演奏した曲の歌詞と、朗読した詩の載っている本。 そしてもう一つは家族からの小さなサンキューカード。 お父さんが亡くなってから、ばたばたと作ったから、とても小さくて、薄い簡単に出来ている本達だったんだけど、びっくりする位に美しかった。

 ピーターはあまり物事の詳細を話さない。 いつも大雑把な事を言っている。 「家族を大切にしなさい」とか「パートナーに大切にされなさい」とか。 デザインに関係ない感じの事ばかりを言っている気がする。 でも彼の場合、結構直接的に関係している。 多分きっと、本当は誰の場合でもすごく直接的に仕事の質に関係しているんだ。

 彼のお父さんの伝記を読んだ時、移民一世だった家族の苦労話がユーモアたっぷりに語られていた。 地球の裏側に引っ越して、開拓民/移民として暮らしたっていう歴史があるから、彼はまず、最も尊い財産として家族や人間関係を認識しているのかもしれない。

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 自分と違う歴史をしょっている人と話す事で、自分の知らなかった世界の過去やそこからの果実を知る事が出来る。 私とピーターは結構何もかも違う。 年齢も性別も立場も背景も。 彼との師弟関係はお互いが違う立場でいる事の美しさや豊かさを教えてくれる。 本当にこれだけの差がある中で出会えてよかったと思うんだよね! 教わる事が沢山。

 ってことで、教師はちょっと変わっている位がちょうどいい人材な気がするの。

1 comment:

Lefol said...

あー、この記事読んで、何かいろいろな意味で
涙がじわっと浮かんでしまいました。

あんなさん、いつも、本当にありがとう!