2009-04-15

牧場とゲイクラッシュ

 ちょっと前の話になっちゃうんだけど、二週間位前の週末はイースターでした。 そして多分、どんなニュージーランド人よりもニュージーランド人らしいイースターの過ごし方をした。

 こっちは21歳が成人なので、大きな誕生日パーティーを家でする人が多い。 家族友人みんな招いて、家でどんちゃん騒ぎだ。 ただ私の友人でそういうこてこてなことをする子が少なかったので、案外参加したことが無かった。 そして、こっちの俗語で知らない人のパーティーに勝手に参加して飲み食いをすることをゲイクラッシュという。 多分酷い意味が影に隠れていそうな言葉なので、使うことをお勧めしないけど、とりあえずそういう。 21歳の誕生日パーティーも、ゲイクラッシュも非常にニュージーランド人らしい行動だ。 両方が交われば最強。 「こてこてですね!」ってレベルに達する。

 今回はそれをやってみた。 別にやりたくてやった訳じゃないけど、友達に車で連れて行かれた先がそこだった。 友達は主催者のうっすらとした知り合いらしく、彼はそこまで怪しくなかったけど私は完全に社会的な居心地の悪い人だ。 21歳になった子のお父さんやお兄ちゃんが泣きながらスピーチをし、お母さんが焼いたケーキをみんなで食べる。 そこでやけに感動して半泣きの私。 でも誰の誕生日なのかはいまいちよくわからない。 素敵なほどにゲイクラッシュ。 ごちそうをたらふく食べて帰ってきた。

 そして次の日、二日酔いの自分は気合いを入れて、オークランドから車で一時間半位の所にあるチーズ工場と友人の実家の牧場および果樹園に行って収穫をしてきた。

 開拓民としか言いようが無い生活をしている場所だった。 そこでは女はライフルを抱えて寝ると言われた。 最初、何の話をされているのか分からなくて「ライフルって何だっけか?」と考えていた。 そして「っえ? ライフルってライフル?」となり、聞き返してみたら、「うん。 開拓民はライフルを抱えて寝るのだよ。 うちもばあちゃんはまだライフル抱えて寝る。 男どもが数日かけた長い放牧の度に出ている間、夜間獣や蛮人に襲われても大丈夫なようにね。」と返された…。 なるほど…。 そうきたか…。 「なかなかにエキセントリックだね」と言ったら「孤立は人をどんどんエキセントリックにする。」と含蓄のある言葉をかけられた。

 崖をのぼり、ものすごい絶景を見る。 あまりのあっぱれ感に心打たれる。 ごろっと羊が死んでいるのを発見する。 「っあ! あの羊死んでる!」と叫んだら「その発見力の強さは絶対に天性の羊飼いのものだ。 羊飼いにならないか?」とちょっとリクルートされる。 私と羊飼いってのは、全く相容れないと思っていたけど、案外気質があるのかもしれない。

 そして夕方果物の収穫。 これも意外と私はうまかった。 友達のばあちゃんの家のをちょろまかしに行ったので、匍匐前進で、地面に落ちている果物を拾っていたのだけど、まるで相手が私に引きつけられているかのごとく見つけられる。 っわ、私牧場とか果樹園とか向いているのかもしれない…。

 夜長いドライブをしながらオークランド市内に戻ってきたとき、200年位タイムスリップをした気分になった。 ライフルを抱えて寝るシチュエーションから、町中で働く工業デザイナーへの帰還。 変な感じだった。

 ウェリントンの友達にこの話を電話でした。 日々、「牧場に行かなくちゃいけない位なら、仮病を使って家で寝る。」とか「ゲイクラッシュなんてプライドの無い行動は絶対にしない。21歳の誕生日パーティーなんてキッチュとおぞましさの結晶だ。」って断言していたので度肝を抜かれる。 「オークランドがお前をそこまで変えたのか…」ってなっていた。 おうともよ。 楽しいじゃないか。 しかもイースターホリデーにそんな事をするなんて、こてこてで面白いじゃないか。 人は変わるのだ。

 

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