2009-04-01

良い一日

 昨日髪を切った。 どんなスタイルにしたいですか?と聞かれたから、好きにしてと答える。 「あなたがやりたいと思っているスタイルの中で私に似合いそうなのをやって。」と言ったら相手の目が輝いた。 「本当に?」「うん。 本当に好きにしていいよ。 伸びるし。 驚かせて。」と言った。 いつも人に注文ばっかりされていているからなのかなあ、この態度は美容師さんにいつも喜ばれる。 「もうちょっと注文した方がやりやすい?」と聞いたら「いや、出来ると思う」と言われて、こっちも楽しくなった。 いいね。 相手は興奮してシャンパンを開けてくれた。 「僕は切っている間は呑めないけど、君はガンガン呑んで」と言われて、遠慮なく結構呑んだ。 

 結構ディテールのある髪型になって、途中で十分ぐらい立たさせられた。 下から何かをやられていると植木職人に整えられている松のような気分になる。 しかもこっちは1人でシャンパンのボトルを開けているので、軽く垂直に立っているのが辛い。 しかしここでふらっときたら私の髪の毛はとんでもない事になってしまう。 どんなプレイ! 座れた時はほっとした。 結構可愛い髪型になった。 

 私がその日最後のお客さんだった事もあって、終わった後に彼が音楽の音量をあげてくれて、2人でしこたま呑んだ。 「すっごい楽しかった! こんなにやりたい放題だったの久しぶり。 絶対また来てね。」と言われた。 やっぱりお互い楽しかったと思うのは気持ちがいい。 そういう状況の方が良い仕事をしてくれるしね。 深夜帰宅。 ただ結構酔っぱらっていたので、今日目をさました時に「しらふの時に見たらありえないぐらいのカッティングエッジな髪型だったらどうしよう」とは思った。 大丈夫、しらふで見ても結構可愛い。

 機嫌良く出社。 激しく集中して働く。 今日一日で絶対過去一ヶ月分ぐらい働いた。 要するにこれまでは全く働いてなかった。 午後教授が来た。 

 出張中の上司抜きでプロジェクトのレビュー。 色々と進む。 だたこれで上司が入ってきたらまた進まなくなるんだよな。 やっぱり現場の人とデザイナーってのは違う働き方をする。 片方は過剰な提案をし、片方はそれを徹底的に押さえる。 会社側は無意識であってもバランスを取ろうとするし、保守に走るんだろうな。 

 私は自分の案を押し切る勇気がなく、結構会社に「駄目。現実性無さすぎ」と言われると、すぐ自分の案を引っ込めてしまう。 帰りの車の中、教授と2人っきりの時に教授にかなりがつんと言われる。 「うわーーーーーーん、もおおおおいい、このままここでおろして!」って高速道路の途中で思う。 

 会社の人がいる時に彼が言う言葉と、2人っきりの時に言われる言葉は最終的なメッセージは同じでもコミュニケーションの方法が違って、きっつい、きつい。 言葉づかいはソフトでナイスだけど、実際言ってる事の内容が厳しい。 怖いぐらいに厳しい。 彼が怖いんじゃなくて、内容が怖い。 こんな挑戦私に出来るのだろうかとびびりきる。 でも出来ると思われたから雇われているんだろうし、やるっきゃないだろう。 挑戦だ。

 とりあえず上司が出張から帰ってくるまでに、かなりまとめあげていて、相手を納得させられるデザインを提案できないとこのプロジェクトは転けると気がついた。 教授の今日のガツンは、ウェイキングアップコールだった。 まじでやばい。 明日、フルスロットルで半端無くやらないといけん。 くはぁぁぁ…。 でもやるっきゃない。

 とりあえず、そんなホラーな状況が車の中でおこっていたとはつゆ知らずな、就職活動中の元クラスメイトと合流して皆でディナー。 教授、彼にもきついきつい。 厳しい!!! 相変わらず言葉遣いはソフトでナイスだけど、もー、内容は泣いて走り出したいぐらいに「コミットしろ、さもなくば去れ」な内容で、アンビリーバブルに怖かったわ。 ただ、すごく良い言葉を私達に言ってくれているんだという事は分かる。 尊敬に値する。 

 教授はそのまま彼の出張先に向かうため空港へ。 私達2人は馬鹿みたいに教授に手を振り、バーへ向かった。 呑みながら、お互いのモラルサポートをする。 私がこれまで人からもらってきて、価値があったと思っている言葉は言えるだけ言った。 そして相手を励ませるだけ励ました。 もう今回は不安のうつし合いはしないと決めていた私は徹底的にクールにいこうと提案し続けた。 そうしたら彼の態度も柔らかくなって、「とりあえずクールにいよう」って感じになれた。 そして今度は私の髪型を徹底的に誉めてくれた。 元クラスメイト達の何が素晴らしいって、新しい服や髪型やらを徹底的に褒めちぎってくれる事だ。 滅多にそこまでやってくれる人達はいない。 「もーーー、今のアンナの爪の形も最高」とまで言えるヘテロの男の子たちは私はクラスメイトしか知らないよ。 みんな優しい。 良い人間たちだ。

 そんなこんなで今一部の元クラスメイトたちは完全にお互いのモラルサポーターになっている。 役目が変わった。

 職場では「昨日よりもっと生産。もっとコミット、もっとギヴィング。」を心がけている私は、プライベートの状況だと「昨日よりもっとバカ、もっと幼稚、もっとそのまんま」になってしまう。 仕事、デザイン、将来の話しをしていた時の私と、他の事を話しはじめた時のギャップが激しすぎたらしく、相手に大笑いされた。 振り幅の少ない人になれるものならなりたかったが、残念ながらそうはいかなかった。 要点押さえて文明化されれば後は野生のまま放置していても許されると思っちゃってるからなぁ。 「よく、そんなバランスを保てるな」と誉められた。 保つも何も、こんな自分を堂々と見せられる人が今近くにいてくれてよかったと心から思ってますよ。 彼がオークランドに引っ越してくるまでは、やっぱりストレス溜まったし、どうして良いか分からなくなったりして、誰もいないのを確かめてから、職場で1人でトランポリンしまくったり、逆立ちしたりしてたよ。 それで、「っうん。 まだいける。」ってなってた。

 とりあえず今の私のプロジェクトがまだ軌道に全く乗っていない事、やる事は山ほどあること、そしてやれば出来ると教授は思っている事、私の今の髪型はナイスな事、そういうのをひっくるめて、すごく良い一日だったと思う。 

 後職場で眠くて眠くて仕方がなくなった時に、これまでは途方も無い自己嫌悪と無力感に苛まれて、全く仕事をしないでただ起きている事に集中していた。 毎日私は昼過ぎの二時ぐらいに眠さのピークが来て、ほとんど何もしないで一時間ぐらい過ごしていた。 目を開けて座っているだけで精一杯。 でも今日自分で自分の悪口を言い始める前に、二十分ぐらい職場のソファーで昼寝をした。 やっぱり起きる時まだ慣れてないから辛かったけど、その後の集中の持続は華々しかった。 そして毎日軽く朝一時間、昼過ぎに一時間、合計二時間も自分自身を心底恥ずかしく情けなく惨めに思っていたのだけど、それをしなくて良いだけで、こんなに前向きなやる気が続くのかと驚いている。 昼寝、万歳。 

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