2009-01-18

トロン トロン

 大学の時の友達のトロン君から「お前そろそろこっちに戻ってきてんじゃないの?」と連絡が入った。 「いかにも」と答えると、「なんて悲しいんだ! 電話の一本もくれなかったじゃないか!」と怒られた。 「いやいや、まだ戻ってきて四日目ぐらいだから!」(本当は6日目、この数を言ったら怒られると思い、とっさに嘘をついた)と言い訳。 それでも「そんなにいたのか! なのに連絡を入れなかったのか!!!」と怒られた。 一日会っていなかったら、世界が変わっちゃうんじゃないかってぐらいの親密さを私たちが持っていたのを思い出した。

 私たちは今思い返すと多分とても仲が良かった。 くっつき合っていた。 私はウェリントン→東京→オークランドと移動していたので、一ヶ月強会っていない彼の事を恋しがる時間は無かったし、なんかどっか別の宇宙の話しってかんじになっていた。 でも相手はその間ずっとウェリントンで私の住んでいた家のすぐそばに暮らしているから、私とは違う感じがあるんだろう。

 「今何してるの? 私はこれから美術書専門の本屋さんに行って、その後ギャラリーに行くよ。」と言ったら「他にやる事ないの? なんでどこでも同じパターンの生活してんの?」と笑われた。 彼は家でゴロゴロしていたらしい。 自分が細かい部分まで知っている、でももう二度と行く事は無いだろう部屋の事を思い出すとキュンとなる。 「ああー! 今ここに君がいたらどんなに良いだろうって思うよ」と二人同時で言ったのに笑えた。 声を聞くと会いたくなる。

 最近は自分を取り巻く環境がコロコロ変わるから、二ヶ月前のブログを読んだりすると「私、こんな事してたのか!!」と驚く事が沢山書いてある。 人の生活って変わるんだね。 というか人って変わるのだなと思った。 見ている物が結構違う。 勿論、向き合っている人も全然違う。 

 彼とはぐでんぐでんに酔っぱらって、じゃんけんをして勝った方の家に帰り、酔っぱらいすぎていて深く眠れなくて、起きてもまだ酔っぱらっているから平気で相手を起こして、朝焼けをベッドから眺めて、うとうととしては起こし起こされて、酔いが覚めた頃にどちらかが朝食を作って、その後コーヒーを飲みに行って、大学に行ってっていう生活を一緒にいていた。 私が失恋をしてマクドナルドでヒンヒン泣いた時に、横に座ってずっとティッシュで私の顔をふいていてくれた。(この状況は思い出すと笑いが吹き出す。) 傷ついている時に一緒に寝ていると、ちょっと動くだけで"what's up, girl?"と言ってお腹と頭を撫でてくれた。 "Nothing's up, boy."といって、私も相手のお腹をポンポン叩いた。

 多分こういう男の子の友達は、これからは出来ないんじゃないかと思う。 どれだけぴったりくっつき合って寝ていても、ただ温かくてお互いに優しくて、夜目が覚めたときに窓から見える光の移り変わりをただ一緒に見たいから起こし合える、そういう友達になる為には長い時間がかかるからだ。 それにクラスメイトだから出来る関係な気がする。 職場の人とはそうはいかんだろう。 分からんが、そんな気がする。 こういうたまたま一緒に育っちゃったから仲が良い犬と猫みたいな関係には、育っちゃった後に出会ったら出来ないのじゃないかなあ。 要するに、珍しい関係だった。 そのときは別に珍しいとも特に思わず、お互い好きな子がいたりする時は放っといていたし、日常での出来事の背景ぐらいの扱いだったけど、今頭の中が全然そんなモードじゃないから、「そんな私もいたのか」って感じに思える。 人って変わるんだね。 うーん、変わった友達がいたんだなあ。

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