2009-01-16

二日目 炎天下のサバーブで永遠の散歩

 家探し二日目(オークランド三日目)は、宮崎アニメの中に自分がいるのかと錯覚するぐらいに真夏の炎天下の下で行われた。 

 テーマは会社の周りでの家探し。 冷やかし程度にやろうとしていたのだけれども、見学先の家の間の距離が簡単に一時間ぐらいあり、それを全部徒歩でやって、普通に肉体労働だった。 結構車が欲しいと思った。 

 私は今回着いた日から、人事の人の家に泊めてもらっていた。 ものすごく懐の広い、人事という意味を深いところで理解している人だよなと思う。 普通は人事だからって、別にこれから勤める事になる見ず知らずの人の面倒を自宅で数日間も見ないだろう。 本当に良い人だ。 偉い。 

 彼女の家から出発する度に私の迷子ライフの始まりだ。 右も左も全く分からない。 ただひたすら永遠と続く住宅街を地図とともに歩き、第一村人、第二村人、要するに遭遇する全ての人(酷い時は一時間ぐらい誰とも遭遇できない)に「私、正しい道をあるいておりますか?!」と確認しながら歩いた。 真夏の炎天下の暗夜行路だ…。 そしてやっとこさで会社の周辺に着いた。

 会社の周りは「ここはトンガか!」って勢いでポリネシアの島々からの移民が多いエリアで、庭先でや道ばたで人々がゴロゴロ寝ている。 日本の感覚で見ると軽くスラムだ。 ポリネシアンな雰囲気がすごい。 写真撮りたいけど、撮ったら殴られそうだから放置。 普通に動物とかがうろうろ歩いている感じもマジでトンガ。 やっぱ住んでいる人が、そのエリアの雰囲気を作り上げるのだなあと感心した。 ウェリントンと全然違う。

 ぐるぐると歩き回り、数多くの社会保障で生きているシングルマザーの家とかを見た。 そういう感じの人達が空いている部屋を貸して収入を得ようとしているんだよね。 馴染み過ぎそうだから遠慮させていただく。

 そして、最後の家(会社から歩いて15分ぐらいの場所)で、「子供いないし、ここで良いじゃないか!」って気分になっちゃったんだよね。 初老の夫婦(夫オランダ人、妻韓国人)の家の一部を人に貸せるように改造してあって、そこに転がり込む事にしてしまったのだ。 なぜならば、全部あるから!!!! 完全に全部ある。 プロフェッショナルなコーヒーメーカーまであり、ベッドに毛布までかかっていた。 「っさ、皿洗いとか掃除とか買い出しとかの分担ってどうなってますか?」と聞いたら、当たり前みたいに「全部自分たちがやるよ。 ちなみに家賃にちょっとお金を上乗せしてくれたら三食出しても良いよ。韓国料理ですが。」とまで言われた。 完全に養子縁組だ。 韓国料理大好きだ。 トイレットペーパーとか買いにいかなくて良いなんて! なんてワンダフルなライフ! しかも彼らとは台所以外の場所は共有じゃないというお得っぷり。 要するに、一部屋分だしたら、専用の食事と家具と風呂と居間がついてくるマジカルな家なのだ。 「うう、私、このままここに当分住みます」とその場で決断。 しかも、契約書無し。 「最低でもどれぐらいいなきゃいけないとかないの? 契約しなくて良いの?」と再確認したら、相手はあまりそんな事考えていなかったみたいできょとんとしていた。 

 面接の後、私がランドスケープ建築の研究室で助手をしていた事を知った彼らは「じゃあ、庭をデザインするのを手伝って下さい。 禅っぽい庭が欲しいんです。」とオファーしてきた。 さすがにこんなに良いディールは悪いなと思っていたので、喜んで交換条件として庭をデザインする事にした。 って事で私は週末は庭師だ。

 これが事の顛末です…。 好条件な気がしてしまったので、結果的に庭を作らなくてはいけなくなったけど、会社の近くに居を構える事になってしまいました。 都心に住みたかったんじゃないのか、お前と自分に自分に突っ込みをいれるも、なんかこうなった。 しょうがないよ、流れるように物事って流れるんだもん。 って事で、住宅地の奥の奥、ポリネシアンな世界を通ったその先で、私は禅っぽい庭を作る事になりました。

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