2009-08-03

ニュースの差

 日本で報道されるニュース映像と、ニュージーランドでのそれには結構な差がある。 

 英語圏にいると、ある程度簡単に他の国のメディアでも、言語が英語の場合はいろんなチャンネルで放送されているので、アルジャジーラも、CNNも、BBCもFOXも見る事になる。 FOXは人間というその愚かな存在そのものを憎みたくなるほどの強烈な冗談放送局で、見事にクソな事しか報道しないから話にならないけど、ほかのニュースチャンネルは勿論バイアスがかかってはいけるど、己のスタンスにのとってある程度の仕事をしていると思う。 まずジャーナリストが現場に行っているし、そこからちゃんとインタビューや映像を集めてきている。

 例えば中東問題についての報道の時、日本でニュースを見ていても、日本のジャーナリストが現地に行って、現地の街角の人達にインタビューしたり、拷問されている人達のいる現場に潜り込んできて映像を取ってきたりってのはあまり無いと思う。 英語圏のニュースだとめちゃくちゃいっぱいある。 道ばたの人に話を聞いたり、普通の学校の様子や市場の様子、平均的とされている職場の様子をジャーナリストたちが集めてきて、夜のニュースで流している。 勿論、拷問されている人達の様子や、女性がボッコボコに公開処刑をされている様子なんかも、モザイク無しで流している。 そこには、現地のおっちゃんとか、おばちゃんとか子供の姿が生々しくある。

 先日そういう映像を見て心臓がつぶれそうな気持ちになりながら、「こんなん、日本の私の親とかが見たら、ショック死しちゃうよな」と思った。 その瞬間にはっと、そういえばこういう映像は全然日本で流れないと気がついた。 ショック映像として、雑誌に載る事はあるかもしれないけど、“中立的”とされている夕飯時のニュースでは流れない。 日本ではイラストとか文字情報が多く、「お茶の間民俗学」的なちょっとした部族間についての情報をコメンテーターが説明したりする程度で、現地の映像はあまり見ない。 アニメとドキュメンタリーの違い位に違う気がする。 

 日本に暮らしている人達のどれ位が、今日のイラクの市場や街角の様子を、遠く離れているけれども、地は繋がった先で行われている日常の光景として見た事があるかと言うと、案外多くはないんじゃないかと思えてくる。 だって、ジャーナリズムがそういう働きをしないから。 日本でおこっている事件の場合は、現場に行って、そこで色々と情報とか映像を集めてきて使っているけど、海外の事になると比較的安全とされているところ(結果ニュースというよりは、情報バラエティー的な内容になる)に行く程度だと思う。 東京にいる人が、大阪の町並みに感じているような「実際にそこにある場所」としての現実感を、海外の事になると日本の報道は表現できないのではないかなと思う。

 これは予算の違いなんだろうか。 度量のでかさとか肝が座っているか否かなのか。 それとも報道っていう概念の違いなのか。 こうも今日という同じ日を、違う形で取り扱っている姿に驚く。

3 comments:

foomy said...

英語圏はもちろんだけど、時々しか読まないドイツのSpiegelの報道も生々しく、写真が、あんなが言う通り、日本の私たちは気分悪くなるほど残酷なんだね。

ところであんなは12/26日本にいる?早いけど、もし空いてたら、又例の忘年会するのでぜひ。

あず said...

文化と歴史の違いもあるよね。
イギリスなんかも、実際に中東系イギリス人やらアフリカ系、インド系イギリス人が山ほどいて、アングロサクソン系イギリス人も植民地支配の過程もあってだろうけど、海外に利権もたくさん持ってるし、一般的にもよく海外に出かけてる。

だから、日本とはそういう異国の地が現実の場所として持つリアリティが全然違うんだと思う。一般視聴者にとってもね。

日本ではそういう話題がリアリティを持つ文化的な基盤がまだまだないんだろうね。だから視聴者ウケしないし、だからやらない。日本のメディアにやれって圧力をかけるようなロビー団体も存在しないしね。(英語圏には少なからずある)

ただ、アメリカで実際にテレビを見ると、国際的視野を持つような報道番組はムチャクチャ影が薄い。結果、一般視聴者が持つ遠い異国の地のリアリティは日本と同じぐらい、下手するとそれ以上に薄い。

あと、やっぱり先進国文明の上から目線はすごく感じる。イギリスやらアメリカやらの、そういう報道に従事してる人って、圧倒的大部分がスーパーエリートだからね。BBCなんてオックスブリッジだらけ。そういうメディアが基盤になった対外国姿勢もやっぱりかなり上から目線で我が身は見えてない。

せっかくネットとかあるんだからね。
世界中の色んなところの色んな人たちが
直接友達になって情報交換するのが
一番いいのかもね。

Anna said...

Foomy>

本当にびっくり映像の連発だよ。 まぶたの裏に焼き付く、焼き付く。

その映像の強烈さで、実際にこういう事がおこっているなら、絶対に変化が必要だと納得させられちゃうのよね…。 はあ…、この間もすごい映像を見てさ、なんかぐっさり心にきた。 

26に日本にいるかはまだ分からないなー。 いたら是非参加させていただきたいです。


あず>

そう、イギリスでもニュージーランドでも、中東でおこっている事に直接影響されている人達が沢山いるじゃん。 移民としてだったり、難民としてだったり。 だから勿論そういう人達が求めるからテレビのニュースとかでも扱う時間が長くなるんだと思う。 

でもさ、もしそうじゃなくて、関係が無いように思える場所でも見ている側に現実感のある生々しい情報を提供するってのがジャーナリズムなんじゃないかとも思うんだよね。

先進国文明の上から目線ってのはどこにでもある。 もう、これはアヴォイドできないんじゃないかと思う。 教えてくださっているって感じあるわよね。 他人の事ばっかり見ているから自分が見えていないってのも、本当にそう。 だから、それはそういうものなのだと思って、他人が自分を見た姿を勇気を持って見るって姿勢が大切だと思う。 どっちにしろ、カウンターカルチャーがしっかりしていたら、オルタナティブがちゃんとあったら、ある種のエリーティズムは許容できると思うんだよな。 だって、BBCとかは実際に情報を集めてくる力とか結構すごいじゃん。 「うわ、そんなところに潜入して、ちゃんと通訳も見つけて、インタビューして、ちゃんと生きて帰ってきたのか!」って感心させられるところ多いよ。 そういう現場の技術力みたいなのは実際半端無く高い気がする。 こんなに仕事できれば、元々強いエリート意識もよりいっそう強まるだろうと思う。

勿論、それだけじゃ不安だから本当に厚みのあるカウンターカルチャーが必要だとは思う。