2007-12-27

モーツァルトとクジラ


 モーツァルトとクジラを見た。 

アスペルガー症候群を抱えた男女二人がいかに恋に落ち関係性を達成しあっていくかが描かれている映画で、小粒ながら良い映画だった。 「向き合いたい」という気持ちと、「普通」という見えない軸にがんじがらめになっている状態の描写が素晴らしかった。

もう、描写が…、描写が人ごとじゃなくて、本当に途中で何回も心臓が止まるかと思った。 普遍的なものの宝庫な映画な気がする。 本当に「これぞ、私の日々の問題の半分以上を書き出している映画だ」と思った。 とんだリアリティーだよ。 やけに似ている題名の映画イカとクジラに続く名作。 両方とも骨身に沁みる内容で、見ている最中に終始悶えた。 

「ああ、これは私の見ている世界だ」と思える種の映画は貴重だし、そこに芸術の力の側面を感じる。 自分の背中を真後ろから押してくれて、今の自分を少しだけ前に動かしてくれる、そういう映画って意外と少ないよ。  他人事じゃない、って本当に思える事柄ってあんまりなくない? 

あまりにも、日常的に私が難しいと思っている事柄をきちんと書き出してくれている映画なので、周りの人達にも見ていただいて、「どうよ! 君たちも、いつも問題なんてありませんって感じにやってるけど、こういう面だってあるんでしょ?」と確認をとりたい。 (だからって、別に確認し終わった後になれ合いたくはない。 そういう事する奴は大抵ディックだ。)

「普通になりたい」「普通でありたい」と寂しい時に言うと、「普通って何さ?」とか「みんな変だよ」とか言ったり言われたりする。 そしてよくそう考える。 「あー、また変な事しちゃった」って自分で思う時は、勿論「普通って何さ」って思うようにしている。 

ただ、そこには拒否がある気がしてしまう。 

「普通って何さ」っていう発言は、「自分が普通じゃないと思う事自体が高飛車で、理解に苦しむ程に愚かな事だ。なおかつ、致命的にわがままだ。」と聞こえてしまうことがある。 だからちょっと考え込んでしまう。 

目的は人と向かい合う事で、その為に変な事をしてしまった時、自分の不器用さと戦っている人を見た時、どうやって対処したら良いのかはまだ分からない。 でも、「なんかあるぞ。 大丈夫だぞ。 大丈夫だ。」と映画を見た後に思えた。 良い映画だったよ。 心臓が止まりそうになるから、滅多には見れない映画だけど、良い映画だった。 すっごいリアル。

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