2008-09-10

風街ろまん

 今日は一日仕事だった。 今の私の仕事はランドスケープデザインナーの研究助手です。 ひたすらマッピング。 いつもは手で握れるスケールの物を作っているので、街一つを対象とするってのは新鮮です。 
 
 音楽を流しながら地図を読んでいた時に、ボスが東京に行った時に買ったCDを流しはじめた。 彼のお気に入りなんだって。

 最初「なんか知っているけど、思い出せない音だぞ」と聞いていて、はっとこれは「はっぴいえんどの風街ろまん」だと気がついた。 音楽の力は偉大だから結構感情的になってしまい涙が出た。 空気が一瞬で変わる。 とんでもない音楽ってのは時間を芸術にしてしまうからすごい。 

 そして匂いと一緒で、時間を吹っ飛ばして記憶を刺激するところもある。 多摩美にいた時、大学から橋本駅までの道をこのアルバムを聞きながらとことこ歩いていた時の自分と今の自分がはっきりと重なり合った。 いつもは遠くに感じる、あのうっすらとした影と淡い色彩の風景の存在が急に現実的になり心に甦った。 そして私はもうすぐ日本に帰るのだという事実が身にぎゅーっと迫ってきた。



 
 彼が適当な日本語で曲にあわせて歌っていたのも、このアルバムの奇跡のような歌詞の奇跡さを余計に際立たせてしまって、私は完全にセンチメンタルになってしまった。 このアルバムは一曲一曲がダイアモンドだよ。 

 クラスメイトに帰り道「彼がフンフン歌うから、泣いちゃったよー。 でも母国の曲を聞いて泣くっていうクリシエな醜態を相手にさらしたくなかったから、こっそりだけど」と話した。 私と彼がただの友達だった時からの関係を知っている彼女は「彼がフンフン歌ったら、確かに泣けちゃうかもね。 なんかいろんな面が向き合った感じがするもんね。 今の生活とか、日本とか。」と笑いながら言われた。 そんな彼女は今日、たまたま前好きだった男の子のくれたCDを聞いてしまい、切なさのどん底になったらしい。 音楽は感情の振り幅を強めてしまう。 

 地図を読みながら、音楽を聞いてハミングをしている友達の姿とか忘れたくないなぁ。 忘れたくないなぁ、覚えていたいなぁって思う事が日常に多すぎる。 日常の景色がまるで俳句のような、イメージの衝突の繰り返しみたいになってきた。 その間を音楽が流れている。 
 

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