2009-06-01

行進

 こっちの大学は卒業式の日にお昼の街を行進する。 首都にある国立大学という事を異常なまでに誇りに思っている我が母校は行進を国会議事堂から始める。 って言っても、現国会議事堂の向かいにある旧国会議事堂(今は私の大学の法学部)からだけど。 ゴールは市役所や、市立美術館、市立図書館に囲まれた市民の広場。 国から市へ。 なんだかわからんが、そういうコースです。 

 ラジオで行進する時間を言ってくれるので、友達や親戚が行進する場合は街頭に出て待つ。 官庁街及びオフィス街を歩くので、みんなお昼休みに見に来てくれる。 高校から友達の子達はやけにできがよく、皆様官僚になられたので、省庁の前で仁王立ちして待っていて下さった。 仲間内で最後に大学を卒業した私の門出を祝ってくれたよ。

 すっげー、この街に育んでもらったんだよなと思う瞬間だった。 思え返せば十年前、ウェリントンに引っ越して以来、毎日のように歩いていた街で自分が行進をしていると、そして街の野次馬の皆様に街頭で拍手していただくと、結構胸いっぱいになるよ! 子供は、街に育ててもらうんだね。 

 初恋の人やら、ふられた相手やら、ふった相手やら、高校時代の友達やら、彼らの親やら、自分の親やらがみんなして街頭にいて拍手しているから、この思いをどう表現していいのやらと混乱した。 これが現実なのか分からなくなって、「私、実は死んでたらどうしよう?!」と思った。 なのでオークランドのスウィートハートに行進しながら電話をして「今行進中!! バグパイプの音聞こえる? 私生きてる?」と確認したぐらいにシュールリアリズムな経験だった。
 




行進の先頭はスコティッシュバグパイプ。 バグパイプ大好きな私は盛り上がった。 ただ平均的に人々はバグパイプの音が嫌いである(何故?)。 文句を言ってい る人達が多かった。 でもお祭りと言えばバグパイプだろと、ブリテン島育ちな私は奇妙な所でコンサヴァティブに友人らと喧嘩をした。 羊の死に際のうめき声みたいで、味がある美しい音じゃないか。





この奇妙な服装な人達は大学の教員達。 学位のグレードが上がれば上がるほどにクリスマスツリーみたいになっていく。 学長のガウン、すごかった。 





私の学部のガウンのフードの色はケニアレッド。 学部によって色が違い、学位によって形が違う。 学士には白いモコモコがついていて、修士になるとそれがとれる。 理由は「叡智の炎」に近づく事により、防寒の必要が減るからだそうです。 要するに学士程度だと、「お前の叡智はまだお寒い」っていう事で、モコモコ着きになると。 冗談みたいな本当の話しらしい。 ちなみに帽子の形も変わる。





こうやって市民の広場に集まる。 大学の教員は最後に学位を取得した大学のガウンを着る。 うちの大学のはミニマルな黒だからまだ良いけど、イタリアとかアメリカとかのド派手系の所を卒業しちゃうと、真っ黒なガウンを来ている人達の間で、1人で真っ青とかド紫とかっていう「ルネッサンス期ですか?」的悪目立ちをしてしまう。 あっはっは。 普通はガウンの形なんかでは大学を選ばないから、こんなのこういう状況にならないと分からないよね!




真っ赤なガウンに大黒様の帽子みたいなのを被っている先生に「いやー、目立ちますな! 先生のガウン好きですよ」って言ったら照れてていた。 ちなみに青いフードは理系の子達。 



 行進の間はすごい達成感を感じた。 すごく誇り高い気持ちになったし、嬉しかった。 自分が誇らしかったよ。 友達と「嬉しいね! 達成したね! 誇り高い気持ちになるね!」と言い合う。 みんなで「君と一緒に今ここにいれて嬉しいよ!!」とも言い合った。 ううう…、みんなしていっぱい一緒に徹夜したよね…。 スプレーペイントの使い過ぎでハイになったりしたよね!



 卒業証書の授与はホールで行われた。 教授達が壇上にいて、みんなして仮装大会状態になっていた。 いやー、本当に仮装状態。 アカデミックドレスって仮装。 誰から1人笑ったら、全員大笑いして「もーやめようよ」って言い出しそうなレベルで仮装だった。 でも誰も笑わない。 それがアカデミズムの恐ろしさ。




 そして勿論"先住民族"が式典の始めに踊る。 踊らせておけば、バイカルチャーという政治的正さは保たれるのだろうか。 スコットランドの民謡と共に行進し、オックスブリッジで博士号とかを取った人達が教授達で、みんなして仮装してクリスマスツリーみたいになっていて、そして半裸の先住民族が踊る。 ああ、神よ! 何故我々はどんなに頑張ってもこの程度なのでしょうか!

 私はここら辺から「もう、この冗談は終わりにしようぜ。 ほとんど悪夢みたいになってきたよ。」って気分になった。 クソみたいな気分になり本当に失神しそうになった。 こういう時は本当に貧血になり、体が硬直し「気が狂っちゃう前にここから出なきゃ」って思いで体がいっぱいになる。 なので途中退場しようとし、係の人に「せめて卒業証書は受け取れ」と押し問答の喧嘩をする。 客席から見ていた親は「また娘が最後の最後に気分を変えた!」とヒヤヒヤしたらしい。 友達に「一緒に卒業しよう」と強く言われて残った。 自分の子供じみた感じが恥ずかしく、でもこの状況も堪え難く、すごく難しい気持ちになった。

 思い返せば、ずーっとこのコンサヴァティブさに吐き気がしていたんだよなあ。 相変わらずこういうオフィシャルな場面ではすっげーイライラしやすい人になる。 大人になれない。 アカデミックガウンを着ていないと卒業できないとか、公式な場に出れないとか、「これこれこうしないと、おまえはこうできない」っていう態度を取られるのが苦手だ。 勿論、世の中そういうので溢れているけど、出来る事ならそういうのから遠ざかって生活したい。 

 でも基本的には、すごく達成感があった。 嬉しかったし、自分を誇りに思ったよ。 やっぱり大学生活を頑張ってよかった。 そしてすっごく家族と友達に感謝した1日だった。 多分、こんなに家族に感謝の気持ちでいっぱいになった日は生まれてはじめてだった。 本当に、本当に、家族に感謝した。

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