愛おしい友人と夕飯を食べた。 卒業式に彼が留学先から帰ってきていたのでちらっとは会っていたんだけど、きっちりと二人っきりで会って時間を過ごすのは一年ぶりだった。
彼とは一時期無節操に親密になり、その後非人道的な喧嘩をし、ぐさぐさな思いを引きずりながらお別れをしたという人には誇れない経緯がある。 今回はそれ以降初めての二人遊びだったので緊張した。 また相手を傷つけるような事を言ったらどうしようとか、逆に相手に不愉快な思いをさせられたらどうしようとか、うだうだうだうだ考えながら待ち合わせの場所に行った。
二人ともとっても緊張していて、ガチガチになりながら腕を組んで、当たり障りの無い事ばかりを話しながらレストランに向かった。
「ああ、このまま当たり障り無く、ジョイとかとは遠い感じの夜を過ごすのか。 私たちの一緒に過ごしてきた数年間ってこの程度の夜に集約されて行くのか…」と思いつつも仕方ないかなと諦めてながらワインを呑んだ。 一度出来た心の壁ってのは超えられないのねと悲しく思った。
でも奇跡は起きた。 出てきた料理が、あまりにもおいしかったのだ!
一口食べた時点で二人とも、昔の馬鹿の一つ覚えみたいに仲が良かった頃に戻っていた。 尻尾を振れるだけ振った子犬二匹に戻っていた。 「おいしい!」「おいしい!」と二人で連呼しながら、お互いの顔を見つめにこにこしあうしかできなかった。
素晴らしい料理の力を始めて知った。 ウェリントンで一番おいしいとされているフレンチレストランだったんだけど、素晴らしかった…。 メインを味わった最初の瞬間のセンセーションと多幸感は多分一生忘れない! おいしいごはんってすごい!
お互いおめかしして、ガチガチに緊張しながらレストランに入って、一口食べて、とろけて、見つめあって、ほっとしあって,仲直りってその単純な筋書きがあまりにも私たちらしくて笑えた。 本当にどこまで進んでも、何があっても、私たちは単純な昔からの友達で、目が合えば嬉しいし、相手の体が横にあれば幸せなのだ。
高校大学と一緒だった、私と彼は周りから見ると二人の世界が出来上がってしまっているお友達だったようだ。 よく女の子から「彼みたいな友達が欲しい」と言われたし、彼も男友達から「アンナみたいな女友達が欲しい」と言われていた。 勿論私は彼の現在過去未来全てのガールフレンドに心底嫌われ、何回か黒魔法で呪われた気がする。 逆もしかりで、私とちょっとでもロマンティックな関係にあった男の子は皆、一律に私たちの友達関係を軽く呪っていた。 きっとその所為で彼の毛は最近ちょっと薄いんだと思う。
お互いがお互いに反応しすぎてしまうというのが問題で仲違いをしたのだけど、おいしいごはんに励まされ埃がかぶっていた友情と愛情はいきかえった。 おいしいごはんの力を始めて心から理解した。 やっぱり彼みたいな友達がいないと寂しいし、好きすぎて気が散るからっていう理由で友情関係は放棄するべきじゃない。
おいしいごはんはそういう難しい感情や、こんがらがった思いをただすーっと解凍してくれた。 ただ、ほっくりとさせてくれた。 おいしいごはんってすごい。
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