2012-02-26

遠くにあって霞んでいるけど、でも切実で生々しい存在

ボーイフレンドと深夜のデートに行った。 夫は御実家に帰省中。
こんな夜はほっつき歩くに越した事はない。

お酒を呑んで、つまみを食べて、幸せな気分で
ドイツから来たRimini Protokollの"CALL CUTTA IN A BOX"
というパフォーマンスを見に行った。 


CALL CUTTA IN A BOXはすごくチャーミングで温かくて、光に満ちた作品だった。 非常にインタラクティブ。 "50分間、インドのコルカタにあるコールセンターで働くインド人と、一対一で話す"ってのがこのパフォーマンスの基本的な軸。 

Rimini Protokollはみっちりコールセンター側の人材と、私が入る環境に仕込みをしている。

まず夜中に弁護士の事務所に行く。
(この時点では私は全く何も分かっていない) 

時間になるまで建物の外で待つ。 

事務所に入れてもらった後、1人1人オフィスに入る。 

そこで何かが起るのを待つ。 

突然電話が鳴る。 

すごく濃い訛のインド人の男の人がコールセンターから話しかけてくる。 

彼は私のいる環境をかなりコントロール出来る。

お湯を涌かしてくれたりもする。

いろいろと話す。

最初は沢山質問をされる。

夜中に知らない密室に1人でいるからか、
電話から聞こえてくる相手の声をすごく親密に感じる。

普段なら言わないような事もケロッと言えてしまう。 

ビデオカメラをオンにして、コルカタとオークランドにいるお互いを見ながら、
ボリウッド音楽を聞いて踊る。

なんかものっすごく美しかった。

「何年も前から友達だったみたいだね!」と言われる。
本当にそうだと笑う。

スカイプのビデオ越しに見るコールセンターの風景の中には、濃密なコルカタがあった。

インターネット電話が使われるようになってから、
英語圏のコールセンターはかなりの割合でインドに外注されるようになった。 

なので何かの用があってカスタマーサービスとかに電話をすると、
インド人がインドで電話をピックアップする。

そこには常に小さなワクワク感が潜む。 

「この人達ってどんなオフィスにいるんだろう」とか
「どんな生活してるんだろう」とか
「ちょっとお友達になってみたい」とかっていう、
日常で持つ小さな欲求や好奇心に対して
どんぴしゃりアンサーをくれているパフォーマンスだった。

仕込みが見事に出来ていたから
50分間はあっという間に過ぎていった。

最後、スカイプが切れる頃には結構泣きそうになった。

育った環境がそうさせたのかもしれないけれど
私は遠くにあってちょっとピンぼけだけど、
でも切実で生々しい存在に触れるのが好きだ。

ウェリントンにいる友達も、イギリスにいる友達も、日本にいる友達も、
憧れている作家も、大好きな作品も、愛おしい場所も
大抵は私がいる場所から遠くにあって、
霞んでいる。

それはとても寂しいんだけど、
でもなんだかんだでこの寂しさが結構好きだ。
この寂しさを知っている事が好きだ。

多分このパフォーマンスを作った人も、同じような感覚を持っているんだろう。
ささやかで、遠くて、霞んでいて、でも生々しい相手の存在に
なんでだか毎日自分自身が励まさせれて、人生を愛おしく思えるこの感じを。

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