2008-12-01

忘れない為に

泣いたなんだとドラマティックに悲劇的な気分でいた次の日にこんな事を書くのもなんなんだけど、今日は本当に楽しかった。 

高校のときからの私の最高の男友達が、お互いが一日使ってびっちり遊べる最後の日だからって事で思いで散歩をしようと提案してきた。 「一緒にまるまる過ごせる最後の日には何をしたい?」と聞かれた時に、「うーん分からん。 適当に海辺でビールでも呑む?」と想像力のない私は答えた。 でも彼らはもっと繊細で、私の為を考えてくれていて「私のウェリントンで好きで大切な場所全部を一緒に回って、いっぱいいっぱい写真を撮って、思い出話をするってのはどう」と言ってくれた。 こんな提案私からは出てこない。

彼の家に行くまでの五分間でも、まだ昨日の事を思い出して、声を出して歩きながら私は泣いてて、どうしよう、このままだと一日中泣いちゃうかもとかって心配していた。

でもふたを開けてみたら本当に素晴らしい笑いに溢れた一日になった。 

四年ぶりに高校のあるエリアに電車に乗って行ってみんなで散歩をした。 昔住んでいた家を見に行ったり、よく食べたアイスクリーム屋さんでサンデーを買って野原で食べたり、見るもの全てが懐かしくて、嬉しい気持ちが止まらなかった。 天気が記念碑的に良くて、本当に楽しかった。 そして高校について、窓から教室を覗いたり、塀の上を歩いたり、じゃれたりしているうちに、その頃持っていた自由な気持ちが甦ってきた。 昔と比べて私はどんどん良くなっていっているように思い込んでいたから、これは私を不思議な気持ちにさせた。 今は忘れてしまっていたけど、昔は持っていた良い面ってあるんだね。 そういうのを思い出す為に、わざわざ昔自分が関係していた場所に行ったりするのかと納得した。 その頃自分の周りに流れていた空気感に触れて、結構沢山の事を思い出したと思う。 その中にはとても良い気持ちも沢山あった。 

ウェリントンの中心街に戻ってから、ボタニカルガーデンに行って、長い長い散歩をした。 私の好きなガラスハウスの中にある蓮の池を見た。 そしてシダ植物の森も歩いた。 

大学の近くについてから、大学のクラスメイトも合流してみんなでケーキを食べた。 すっごいゴージャスなやつを。 

夕方になって、夕ご飯を作るからと言われて彼の家に行ったら、高校のときの子たちや、共通の友達がいて驚いた。 そしてみんなで彼が作ったピザを庭で食べた。 ワインも呑んだ。 不思議なくらいに幸せだった。 こんな簡単な事がどうしてこうも特別なのか、こんなに幸せなのか分からないぐらいに満ち足りで心が元気でいっぱいになる経験だった。 ただ散歩に行って、ただ大好きな友達が沢山いて、ただそれだけなのに、特別で温かかった。 この質が人生に置ける最も必要な事なんだと、一秒一秒が私に教えてくれた。 

庭でのパーティーを終えて、家のなかに入ったら、みんながニコニコしていて、早く居間に行きなと言ってくれた。 そしてそこにはお手製の巨大なマリオの1upキノコが机の上に置いてあったのだ! 最初何がなんだか分からなくて、でも三秒後にこれはケーキだと気がついた。 しかもBGMでマリオのテーマソングまで流れていた。 そうしたら嬉しくて涙が止まらなくなった。 私は彼の家でマリオを情熱的にやっていた時期があって、今日も高校でぴょんぴょん飛び跳ねながらテーマソングを一緒に歌ったりしていたんだ。 「今アンナが一番好きな物はマリオ!」と、多分誰よりも私に詳しい彼は的確に見定め、わざわざ昨日夜なべをして焼いたそうだ。 うわーーーんって涙が出て、嬉しい嬉しいってみんなにキスをして、みんなでマリオの1upキノコを食べた。 こんなに嬉しい事ってないよ。

こんな事を言うのもなんだけど、優しさとか愛情が無いとやりがいとかって湧かないんだね。 今日疑いなく、単純に嬉しい事がいっぱいあった。 友達がいて、愛情があって、一緒に良い一日を過ごせて、これが人生への軸なんだと思えた。 多分コミットメントは私が考えているほど怖くない。 それどころか誰かに愛情と善意と共にコミットしないと、多分全部が中途半端になっちゃう。 

ずっとコミットメントはただの制約で、リレーションシップは無駄な時間をつぶすための基本的に悪いものだと思っていた。 仕事や作業が善で、誰かとのコミットメントやリレーションシップはそれを邪魔する悪だと思っていたんだ。 でも実際は誰かとコミットしているから、リレーションシップがあるから、働けるし、頑張れるんじゃないだろうか。 自分のこれまでを振り返っても、どれだけ「これはただの依存だ!」とか「人に逃げてるだけだ!」とかって思いながらも、やっぱりそれでも周りの人が大好きで温かい気持ちだったから働けていた。 

愛する人に対する変な警戒心と緊張ほど自分の成長を妨げるものは無い。 こんなにも人にまっすぐ繋がるって重要な事なのかって驚いた。 元来私が正直じゃないから、相手に対しても「駄目駄目駄目、こんなに好きになっちゃ駄目。 こんなに相手の気持ちとか考えちゃ駄目。 こんなに相手の優しさを信じたり、言葉を正直に聞いちゃ駄目。 絶対に裏がある!」って考えていたんだよな。 でも、そんなんじゃ本当になんにもならない。 私はこうもひねくれているのか、驚きが禁じ得ないよ!


家に帰ってから父に電話をした。 そして上に書いてある事を言った。 結構驚いていた。 そしてその通りだと思うと言われた。 確かに彼だって、家族がいるからこれだけ頑張っているんだ。 なんか全てが腑に落ちて、これまで私は何を見てきていたんだろうって気になった。 

雪解けみたいな経験をした。 不思議な、特別な一日だった。

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