2010-11-21

Who do you think you are?

オークランドの一番大きな図書館の横に引っ越してきてから、毎日会社帰りに図書館に寄っている。 こっちはDVDとかも無料で貸し出してもらえるので、テレビなんかで放送されていたドキュメンタリーなんかを夜寝る前に見たりしている。

Who do you think you are?は、元々BBCが初めた家系図に関するドキュメンタリー番組。 現在は、カナダ版、アメリカ版、アイルランド版、オーストラリア版、イスラエル版、スウェーデン版、南アフリカ版がある。

毎回現在生きている一人の人に焦点を当てて、その人の家系図をひもといていく。 これがめちゃくちゃ面白いのだ。

私が見たのはオーストラリア版なんだけど、目から鱗の連続で、考えさせられるし、毎回世界を見る目がちょっとずつ変わる。 私はオーストラリア史をあまり知らないので、余計に面白いのだと思う。 番組から知らない事を沢山知る事ができる。

オーストラリアは移民の国なので、一人一人の持っている歴史が全く違う。 みんなの御先祖様の来た所も違うし、来た理由も違う。 大げさじゃなくてね、見ていると人類ってなんて凄いんだってあっけにとられちゃうんだ。

例えばRon Barassiっていうオーストラリアのラグビープレーヤーのおじいちゃんが焦点だった回。 傑作だった。

撮影当時74歳だった彼は、父親の記憶がない。 彼が4歳の時に戦争で亡くなっているから。 まず父親に関して調べる事から番組は始まる。 色んな公的な書類を見つけていき、最終的に戦争で同じ隊にいて、彼が亡くなる所を見ていた隊員を見つけ、色々な話しを聞く。

次に父方の祖父の事を調べていく。 そして、祖父と曾祖父の関係、曾祖父と、高曾祖父とさかのぼっていく。 どうしてオーストラリアに来たのか、どこから来たのか、もっと正確に言うと、どこのどこから来たのかって具合に段々と自分の家系図を通して自分の産まれてきた背景を知っていく。

彼の父方の家系はスイスのイタリア語圏から、オーストラリアで当時おこっていたゴールドラッシュを追っかけて移住してきた人達だと分かる。 (地球の裏側からだよ! 200年近く前に当時の技術で!! この時点で結構素直に人間ってすごいと感心してしまう。) しかしスイスで聞いたゴールドラッシュは噂でしか無く、地球の裏側のとんでもなく過酷で、どこともつながりの無いような未開の地で、その移民達は何年も失敗に失敗を重ねて行く。 とんでもない努力と重労働は水の泡。 なので今度は果樹園を始め、それは成功していく。 この果樹園はRonの覚えている祖父の代まで続く。

もう、この時点で最近仕事が難航している私は、この不屈のフロンティアスピリッツに感動し、励まされた。

地球の裏側の未開の地で情報やらから遮断され、意味の無い巨大な穴をひたすら数年続け、しかもそれが無駄な努力だったとかって、もう、サーバーが上手く動かないとか、本の製本がずれるとかっていう私の悩みと比べ物にならないよ。 だってオーストラリアの自然は凄いもの。 当時の写真を見る限り「日本国土規模の富士の樹海のような場所に俺が一人ぽつんといる」って感じだよ。 私のオフィス、エアコン付きだし、私、もっと頑張れるって思いました。

番組ではこれらの情報をヨーロッパからの貨物船の記録とか、昔の市役所の記録とか、郷土史を研究している人達とかの協力を通じて発見していく。 私はここに凄く感心してしまった。 どれだけ記録マニアなんだ人類、というかヨーロッパの人達。 googleの遺伝子を感じてしまった。 200年近く前の貨物船の記録って、おい!

母方だったか、それとも父方の誰かだったかは思い出せないんだけど、彼にはアイルランド系の血も入っている。

スイス系の祖先達が来た頃と同じ頃、彼のアイルランド側の祖先は、妻を殴り殺し、オーストラリアに島流しにあう。

オーストラリアに流された人達は、イギリス本土の人工口減らし目的だったので、軽犯罪者達をじゃんじゃん流刑したんだそう。 パンを盗んで地球の裏側の未開の地へ島流しっていう「おいっ!」っていう時代だったのだ。

その中で殺人者が送られたのは非常に、非常にレアなんだそう。 殺人者が死刑に会わなかった事自体がレアなので。

どうしてそうなったのか。 理由は、殺人現場を目撃していた彼の子どもたち(当時十歳ぐらい)にある。 裁判の途中で、子どもたちは父親が母親を殺した事を証言している。(ここもすごい) 父親が母親を殺したのだと証言し、その現場の説明をし、そしてその結果、法がその父親を処刑した場合、この子どもたちは「自分達が罰されている。 自分の証言が父親を殺した。」と思う事になる。 それはいかんと言う事で島流しになったらしい。(この時点で私あっけにとられた。人に歴史あり。壮絶なり。)

これらの情報を当時の新聞や裁判記録を読み解き探し出していく。(実はこの殺人を犯した父親と、息子は名前が一緒であり、当初は同一人物だと思われていた。 でもそうすると色々と符合があわないと分かり、調べていくにつれ、別人である事、そして父親の方がオーストラリアに来た原因の人物であることが分かっていく)

かなりファインなラインで、自分の御先祖様の命は繋がり、現在の自分の命に繋がっているのだと知った、Ronおじいちゃんマジであんぐり。 驚きまくっていた。 そもそも自分にアイリッシュの血が入っている事すら知らなかったのだ。

anyway, その島流しにあった父親、当初は勿論一人で島流しにあった。 しかしRonおじいちゃんはオージーに現にいる。 どういういきさつで子どもたちはオーストラリアに来る事になったのか。 殺人事件がおこった当時、10歳を筆頭に6人の子どもが彼にはいた。 彼はオーストラリアでの生活がある程度軌道にのりはじめた時点で、地球の裏側にいるその子どもたちを必死に、(ものすごい努力が必要とされたのだろうってことは簡単に想像がつく)呼び寄せる。

貨物船やら裁判記録やらでは分からない側面は、果たして、子どもたちと父親はまた親しくなれたのか/打ち解ける事が出来たのかという事だ。 感情的な所は分からない。

番組は今度は彼らの居住記録に注目する。 なんと父親と、父親の殺人を裁判で証言した(事件があった当時は10歳)だった息子は、後年シドニーで同じ家に住んでいた事が分かる。 今度はその家のサイズや間取りを探していく。 そしてその家は現在のロックという地域にある、二間の小さな家だと分かり、「嫌い合っていたらこのサイズの家に一緒に住む事は出来ない。 職業記録などを見ていても、彼らは一緒に住みたくなかったら住まずにいられたような収入があるし、打ち解けたのだろう」という推測にたどり着いていく。

もうRonおじいちゃん、言葉を失っていたよ。

気持ちは分かる! 私も結構色んなレイヤーで言葉を失った。

人びとの人生も凄いし、ヨーロッパ人達の記録+アーカイブマニアっぷりもすごいし、当時の法制度やらもすごいし、移動距離も凄い。

あっけにとられた。

で、この規模の話しがみんなにあるんだよね。 それが番組を見ていると分かるんだ。 人類の命の繋がりって、すごい。

ミクロネシア出身の人なんて、自分の御先祖様の歌声を、ケンブリッジ大学の文化人類学研究所経由でロンドンのナショナルアーカイブの鑞で出来たレコードの中から見つけて、おったまげていた。 この人の回も凄かった。

とりあえず面白い。
人類凄い。
そしてヨーロッパ系の人達の記録マニアっぷりも本当に凄い。

もし私に子供が産まれたとして、そしてその子供に子供がうまれたとして…って考えてみる。
その子(私の孫)は、祖父母四人、両親二人の人生やら命の連鎖やらの結果であるわけだ。
過去を振り返れば、半端無い数の人達の命がある。

自分の命と今地球上に生きている、
想像もできないどっかの誰かの命の連鎖が繋がって、
新しい命になっていく訳じゃん。

自分の孫なんて、半分以上、私の命の連鎖以外で成り立っている。

自分の命が見ず知らずの誰かの命と遠い未来で繋がる可能性があるのかぁと考えると、
なんかえらく感心してしまうよ。

「自分の孫」なんて考えると、なんか自分の命からの連鎖って感じにしか見えないけど、
実は私の命が他の人達の命と繋がりあって、どの人の人生の背景にもダバダバダバダーって色んな歴史や背景があるのだと考えると、世の中の一筋縄ではいかない感じが実感できて面白い。 なんか変なきっかけだけど、社会性が若干自分の中で芽生えたよ。


おまけ
アメリカ版だとサラジェシカパーカーとかが素材になっていて、彼女の御先祖様が魔女刈りで殺されていた事とかが分かったそう。 アメリカ版も凄そうだな…。

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