2010-11-20

The man in the hat

The man in the hatという映画を見た。





Wellingtonのアートディーラー、Peter McLeaveyに関するドキュメンタリー映画。
想像以上に素晴らしい映画で、終止心が揺さぶられた。

彼は私の大学のすぐそばで、40年以上ギャラリーを経営しているアートディーラーだ。 NZで最初に現代美術を取り扱いはじめたギャラリーで、NZの現代美術史は彼の狭い、しかし美しいギャラリーの壁の上で綴られ続けてきた。

彼は私の尊敬する、そして私の心の深く、そして一番求めている部分に触れてくる作家達を、沢山見つけ出してきた。
そんな奇跡みたいな仕事がどうして可能だったのか、映画を見ていて、理解できた気がした。

そして私が彼のギャラリーに行く度に感じた事を、映画も見事に描き出していた。 彼の見つけてきた作品の素晴らしさ、ギャラリーの功績、そしてなによりも彼の人となりの素晴らしさについて。

初めて私が彼のギャラリーに行った時、入り口で握手をされ「君がここに来る事を42年間待っていました」と言われた。 それから沢山の話しをした。 そこで展示される作品がとても好きだった。 私の知らない世界をいつも見せてくれた。 私だけでは開けられなかった、自分の中の、世界と触れ合う為の感受性の扉を沢山開けてもらった。

同時にピーターのあまりにも優しく、まっすぐで、力強い彼の言葉に私は励まされ続けてきた。
彼は言葉の人だ。
彼の言葉との関係により、私は改めて言葉の持つ、自分と世界を繫げてくれる力を知りなおした気がする。
的確に自分の感じている事を伝えよう、表現しようとする、人としての向上心を、彼から感じたんだ。
嘘が無くて、明確で、そして何よりも言っている事の内容が良い。
しっかしとした言葉の骨格と、綺麗な単語達を効果的に混ぜて、言うべき事を言っている。
それって凄いことだよ。 とても難しい。

大抵ワーディーな文章や、やけに形容詞連発して当人の感受した事柄に付いての話しは退屈で、残念な感じがする場合が多い。 脳みそだけが空廻ってしまった感じがして、そのアンバランスさがめんどくさくて苦手なのだ。 自由な魂を持っていて様々な事を感じる為の扉が開いているのと、神経質なのやら未熟なのってって全く別の話しじゃん。





私をピーターのギャラリーに連れて行ってくれたのは、ウェリントンで当時同居していた男の子だった。

私は大抵、一緒にいるその時には、その子から与えてもらった事柄の量に全く気がつけていない。

同居人とかになると距離が近くてなんでも見えてしまう分、大抵若干相手との関係をめんどくさいと思っていたり、相手を大した奴じゃ無いと思ってしまったりする。

でも、後から考え直してみると、本当に信じられないぐらい沢山の事を、一緒に住んだ相手からは学んでいる。

彼から教えてもらった事や気がつかせてもらった事に、いまだにかなり影響されていて、そして素晴らしいと思っている自分に、自分で驚く。 その時はそこまで価値を見出していなかったから。

絶対にかなりの生活の知恵と喜びを彼らから得た。 不思議なもんだ。 友達として気が合うとか、そういう次元以外でも人間関係って尊い果実を実らせる事ができるんだよね。

だから彼の事を懐かしく思い出しながら、映画を見ていた。

そして自分が価値を見出せていなかったり、尊さが分かっていない事柄が、
未来から見てみたら、今日の生活の中にも溢れているんだろうと思えて、救いを感じた。





それにしても映画の中に出てくるウェリントンが、私の見ていたウェリントンにとても似ていて、本当に懐かしくて胸が温かくなった。 「これこれこれ! これが私を育ててくれて、そして私の愛してやまないウェリントン!」ってなりました。 自分の中の大切な景色が、このドキュメンタリー映画にも沢山記録されていた。 目線が似ていた。


ウェリントニアンは普通に国会議事堂の敷地内を通って通勤する。 誰でも入れる。 敷居がめちゃくちゃ低い。 というか、ほとんどない。 映画の中にもその景色が出ていた。 よそではちょっと考えられないよね。 近道だから国会議事堂の敷地内を横切って行こうぜとはならないだろう。 

これはアティチュードの問題なんだと思う。 「国会議事堂は開かれた公園のような場所であるべきだ。」っていう人びとのアティチュードが、色んなルールを作り上げて行くんだよね。 ウェリントニアンのアティテュードが映画の中に偶然色々写っていて懐かしかった。

他の街に住んでみて、ウェリントンが結構特種なコンディションの上で、ああいう感じなんだなってのも知って、どこもかしこもウェリントンのようになれば良いとは思わなくなったけど、それでもやっぱり好きだな。

1 comment:

Lefol said...

Annaさん、こんにちは!

いつもどんな内容でも、読むと心の底からじんわり元気が湧いてきます。

その感覚を、良く言葉でこうして表現してくれた、わかるわかる!ということや、
刺激をもえたり、膝を打って共感することがあり過ぎて、なかなかコメントもできないほど。

しょんぼりしてるときなんか、ほんととても効く☆
ありがとう!