2010-08-08

さよならG9

 数年間愛用していたCanon powershot G9がついにお陀仏した。

酷使し過ぎていたようで、どうもガタピシャ来ている感じはあった。 そしてある日動くのをやめた。

 高校で写真の授業を取っていたわりには(NZの高校では"幾何" "物理" "統計" "音楽"ってのと同じ割合で"写真"っていう授業がある。)カメラに疎い私。

 当時は勿論フィルムでありましたし、ベージックな働きは一応学びましたし理解はしているんですが、こう、情熱的なオタク達の言説にはついていけない…、ってのが実情です。

 カメラは本当に奥が深い…! 「写真に特化したい」となったら、金銭的にも技術的にも情報的にも本当に人生を捧げなくちゃいけないですよね。

 実は今、写真と製本に関する産業に携わっているので、とても優れた写真家の方々や、特化した印刷技術に関わらせていただいております。 一日にそれこそ何百枚も写真を見ているのですが、余計に「これは…、プロの人に巨大な尊敬を捧げて、私はサポートに徹しよう!」という思いを強くする一方です。 写真は、本当に、一つの宇宙。

 ただ仕事上、ドキュメンテーションっていう側面で一日に何回もカメラを使って写真を撮影しています。 そして私生活でもよく写真を撮ります。 カジュアルな行為としてはとてもとても好きなのです。 ほぼ唯一の趣味であります。

 なのでカメラが無いのは非常にきつい。

 今日はカメラ小僧の友人と一日カメラの買い出しに行ってきました。

 何でもかんでもイメージで決める私の友人は、それはそれは頼もしかった。

 一瞬デジタル一眼レフに自分のカメラをグレードアップさせようかと迷った私に、「杏奈が一眼レフを担いでいる姿は想像がつかない。 似合わない。 かっこわるい。 色っぽくない。 君向けじゃない。」と、ずばっと独断され、一気に選択の幅を狭めてもらいました。

 確かに私の日常的な使い方を考えると、一眼レフは向いていない。

 ってことで、コンパクトカメラのハイエンド機種を検証。

値段のパフォーマンスがいい事から、Canon S90に一瞬心が傾いたが、写真撮影ってやっぱりなんだかんだでマニュアル操作が楽しいんだから、簡単操作系を買っちゃうと、結局使わずにもうちょっと操作できる機種を買い直してしまいそう。  って事で却下。 

ケチな心が出てきて「いや、これも一種の"質素遊び"って位置づけにして安いカメラで手を打つんだ私!」と一時間ぐらい自分を説得したんだけど、失敗。

それで一応G11を候補にあげて、試し撮影をさせてもらう。 頼もしい。 実に優秀。 しかも結構美しい。(デザイン的にはG9がなんだかんだで一番完成に近かった気がするんだけど、それでもG11も他の機種と比べるとずば抜けて美しい)

ただ、心の中にはずっと欲しいと思っていたカメラもあったのだ。 これを口に出したら、欲望に耐えられなくなって買っちゃうと思って、躊躇していたマル秘カメラが。

「がっちゃんこ」と物がはまる感じが好きでたまらないから、工業デザイナーになったと言っても過言でない「がっちゃんこ」好きな私の心をロックオンしてたまらないビューティフルで、ソリッドなワンダーカメラ。 それは…、RICOHのGXR。 発売された時から欲しくてたまらなかった。 

ただNZではニッチすぎるカメラとして非常に値段が高かった+日本にこの間帰った時は円高過ぎて買えなかったので、欲望は強固に封印されていた。

このカメラは工業デザイナーだけに向けて発売されたんじゃないかってぐらいに、私の心をくすぐった。

まず、四角い。

素材の持つ美を最大に引き出しているマット加工。(素材の祝福は工業デザインへの祝福である)

モダニズムの申し子のような黒。

近代工業のシグネチャー的動き、がっちゃんこ。

近代工業の礎的コンセプト"ユニット"を仕様。

コンパクトカメラ以上、デジタル一眼レフ以下の、そのたまらない立ち位置。(デザイナーは全ての職業の中間位置に立つのが仕事なので、このカメラには感情移入できる。)

「既存のカメラからの大冒険をしましたな!」っていう、ラディカルなゲシュタルトの変化。

結果として非常に美しい。

要するに、たまらない。

そしてラディカルすぎるので、常に廃盤崖っぷち感があり、思わすその実験性を評価しサポートする為だけにも商品を購入したいという、RICOHのエンジニア+デザイナーさんたちへの仲間意識。

本当に欲しかったんだ。

持っちゃいけない、もったら買っちゃうと思いつつも、思わず触ってしまった。

そして友人にその立ち姿を絶賛される。 「このカメラ、アンナ似合い過ぎ。」と工業デザイナー同士でしか評価ができないような基準で、似合うか似合わないかを審査してもらった。


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